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人間がAIに勝るものは何か、両者は戦うべきか手を組むべきか

2022年04月28日更新

後継者不足に悩む日本の製造業では、人工知能(AI)を活用する動きが広がっています。人材不足や後継者不足は、製造業が抱える深刻な問題あるため、AI活用は注目されているのです。

AI開発プロジェクトに携わったことのある慶応義塾大学理工学部管理工学科教授の栗原聡氏は「いまのAIは電卓の延長」と話しています。AIを有効活用するためには、その特性を理解する必要があるでしょう。

そこで今回は、さまざまな分野で活用が進むAIについて、人間との違いにフォーカスを当てて解説します。

令和2年度戦略的基盤技術高度化・連携支援事業

資料:令和2年度戦略的基盤技術高度化・連携支援事業(中小企業のAI活用促進に関する調査事業最終報告書2021年3月) 最終報告書から

製造業で注目されているAI活用

現在の製造業では、人材不足・後継者不足を解消するためにAIを活用する動きが活発になっています。少子高齢化により人材が不足しているだけでなく、熟練の技能者の知識・技術などのノウハウを引き継ぐのが難しいという問題です。

機械化とシステム化が進んだ現代でも、生産する製品によっては最終的に熟練者の人の目で判断するケースは少なくありません。また、熟練者の技能は言語化するのが難しいことから後継者を育成するのが難しいのです。

熟練者の判断を脳波から読み取り、AIに学習させることで、的確にノウハウを引き出せます。このようにAIを活用することで、人材不足や後継者不足を解消する道筋が見えてくるでしょう。

現状では課題も多い

製造業が抱えるさまざまな問題をAIが解決する糸口が見えてきましたが、そこには課題も多く存在しています。例えば、AIを使ったシステムを導入する費用が高く、大規模な設備投資ができない企業は利用できません。

また、実際に導入した後も、AIなどのデータ分析ソフトウエアを活用するためには、統計学や機械学習に関する専門的な知識・技能が求められます。さらに、熟練者の脳波を読み取り、効率良く学習できるといっても、ある程度学習期間は必要になるでしょう。つまり、導入すればすぐに解決するわけではないのです。

AIが漫画を描く時代?プロジェクト《TEZUKA2020》

AIを活用して漫画を描くプロジェクトが、現在も進行しています。このプロジェクトでは、AIが漫画家の作品データをインプットすることでストーリーとキャラクターのデザインを学習し、アウトプットします。このプロジェクトで学習に使われたのは漫画の神様と呼ばれる「手塚治虫」です。プロジェクト側は以下のように説明しています。

膨大な手塚作品をデータ化し、AIがストーリーとキャラクターの視点から“手塚治虫らしさ”を学習して生成したプロットとキャラクターの原案を、人間のクリエイターチームがブラッシュアップして完成させた「31年ぶりの新作」。

今回のプロジェクトでは、AIが全工程を担当するのではなく、シナリオのプロット(設定とあらすじ)と、キャラクターの原案のみを対象にしています。残りの作業(ストーリーの作成、作画など)は人が行うことで漫画を完成させます。

このプロジェクトでも、AIが「手塚治虫らしさ」を学習するために膨大な量のデータが必要です。そのためスタッフは既存の漫画のストーリーを小説化し、その展開を13個の構造に細分化。その構造にストーリーを埋め込み、再構成することでプロットを生成します。

今回のプロジェクトでは、AIが生成した130個のプロットの中で、特に興味深いものを人間が選定し、企画が進みました。

TEZUKA2020プロジェクトが生み出した、手塚治虫31年ぶりの“新作”『ぱいどん』

出典: TEZUKA2020プロジェクトが生み出した、手塚治虫31年ぶりの“新作”『ぱいどん』(モーニング公式サイト

AIと人間の最大の違い

ここで、AIが漫画というクリエイティブな仕事ができるようになると、「AIが人の仕事を侵略する」といった不安が生まれます。そうなれば人の仕事はAIに代替され「仕事がなくなってしまう」と感じる方もいるでしょう。

総務省の学術雑誌『情報通信政策研究』では、「AI脅威論の正体と人とAIとの共生」というテーマで、前述の栗原教授が寄稿しています。そこでは、美空ひばりに象徴される故人をAIで「よみがえらせる」ことに関する議論、自律型AI兵器開発禁止など、さまざまな議論があると述べています。

AIを有効活用していくためには、AIと人間は何が違うのかという根本的な問いへの回答を大まかにでも用意しておく必要がありそうです。

AIはビッグデータを学習することで、人に近い判断ができるようになります。例えば、画像認識や言葉を理解することで、さまざまな業務の効率化に役立つでしょう。実際に、工場などの品質検査などに使われており、精度は高くなっています。

AIを搭載したロボットなどの機械は、人と違って疲れることがないため、24時間365日体制で働ける点も大きな違いと言えます。疲れないという点を考えると、反復的で単調な作業ほどAIが優れていると想定することができそうです。

AIは新しい価値を見つけられない?

栗原教授は「今のAIは電卓の延長線」と表現しています。これは、人に近い判断ができるようになっても、計算して最適な答えを求めているにすぎないからです。

そのため、現在のAIはクリエイティブな仕事を全て行うことはできません。今のところ、膨大なデータを使った機械学習により精度が高い「判断」ができるようになっています。しかし、膨大な情報の中から新しい価値を見つけたり、データを組み合わせて価値を作り出したりすることは難しいのが実情です。残念ながら、鉄腕アトムにはまだほど遠いわけです。

人間の場合、普段の生活の小さい変化から新しいことを見つけたり、思いついたりします。成長の過程で体験したもの、学んだことをもとに想像力を膨らませることで、新しい価値を生み出すでしょう。

人間の脳を全てデータ化することで、感情や思考を読み取れるかもしれませんが、それには膨大な時間と複雑な計算が必要です。そのため、現在では人間の生きざまのようなもののデータを取ることはできません。

このように、AIは学習することで判断はできますが、新しい価値を生み出すことはできないのです。そのため、クリエイティブな分野でAIを活用する際は、新しい価値を生み出すヒントや材料を見つけるために使うのが良いでしょう。

AIは最良のパートナーであるべきか

漫画の例でいえば、AIがシナリオのプロットとキャラクターの原案を担当しました。同様にクリエイティブな仕事の中でも調査やデータベースの整理といった、人が行うと膨大な時間を要する作業をAIが行うことで効率化を図れるでしょう。

例えば、デザイン関連であれば流行のカラーやデザインの大枠などは、市場にある大量のデザインデータから抽出、そこからプロのデザイナーが仕上げて完成させます。音楽であれば、流行のメロディーや人気があるフレーズなどをAIなら抽出できるため、楽曲作りの参考になるでしょう。

研究者の間でも、AI活用が注目されています。膨大な量の論文があり、日に日に増えていくため資料を整理し理解するのに苦労するでしょう。そこで、AIを使って論文を分類したり、内容を大まかに理解したりすることで、過去と重複することなく研究を進められます。

このように、AIができること・人間ができることを組み合わせることで、クリエイティブな活動を効率化し、今までにない新しい価値を生み出せます。AIを活用することで、さまざまな業務を効率化できます。人の手が不要になり、時間の制約なく稼働できるようになれば、生産性工場や人材不足解消などにつながります。さらに、「漫画を描く」という仕事にもAIの領域は広がっており、クリエイティブな仕事への活用が期待されています。

しかし、AIは万能な機械ではないため、人と違いがあります。AIは新しい価値を見つけたり、生み出したりすることは苦手としているため、AIと競争するのではなく、最もうまく共存する方法を見つけた者が、競争優位性を獲得すると言えそうです。

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記助
IT業界に限らず、さまざまな分野に携わるマルチライター。
メタバースやAIなど、ホットな話題を提供します。
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