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銀行が次々に誕生する? FinTechの主役の座をうかがうBaaS

2022年07月11日更新

ECサイトなどの小売業などの異業種企業が、銀行の既存システムを利用して金融サービスを提供する動きが本格化しつつあります。自社サービスに銀行機能を組み込むことで、ユーザーの利便性はさらに高まるでしょう。

しかし、このようなサービスが普及することで、銀行と非金融企業の垣根はさらに低くなります。このサービスの基盤を支えているのが「BaaS」という技術です。今回は、銀行とそれに関わるBaaSについて解説していきます。

FinTechサービスの活発化

金融とITテクノロジーを組み合わせた技術である「FinTech」。この技術は主に銀行や証券、保険などの金融分野で使われていましたが、近年では小売業(ECサイト)などでも活用される動きが目立ちつつあります。

非金融業が金融サービスを実施することで、ユーザーにとって利便性は高まるものの、銀行の存在意義が薄れることにもつながりかねません。その根幹を支えているのは、「BaaS」と呼ばれる技術です。どのような仕組みでECサイトなどが金融サービスを提供するのか、仕組みなどを押さえておくと良いでしょう。

BaaSとは

BaaSという言葉にはいくつかパターンがありますが、金融サービスに関しては「Banking as a Service」の頭文字を取った言葉を指します。なお、スマートフォン・タブレットなどのバックエンドを支えるクラウドサービスもBaaS(Backend as a Service)と呼びますが、ここではBanking as a Serviceを指すものとします。

BaaSはこれまで金融業が提供していた機能・サービスを、クラウドサービスとして提供するものであり、非金融業でも自社サイト・サービス・アプリなどに金融機能を組み込めます。このBaaSのプラットフォームを使うことで、金融機関以外でも金融サービスを提供できるため、世界的に注目されている技術でもあります。

このBaaSを利用した代表的なサービスには、ファッションの通販大手である「ZOZOTOWN」が提供している「ツケ払い」があります。このサービスでは、商品を受け取った後に後払いできる決済サービスであり、最大2カ月後までに支払いできます。

BaaSとは

BaaSの基盤

金融機関以外が金融サービス(預金・融資・為替など)を扱うためには、銀行ライセンスなどを得る必要があります。そして、このBaaSの仕組みを支えているのは金融機関です。つまり、銀行などが基盤になっているBaaSを活用することで、銀行ライセンスを持たない非金融機関でも自社で金融サービスを提供できます。

BaaSを活用することで、基盤を提供している金融機関はライバルを増やすことにつながるように思えますが、金融機関・非金融業・ユーザーのそれぞれにメリットがあります。ここからは、BaaS活用のメリットを分野ごとに紹介します。

BaaSを活用する企業(非金融業)側のメリット

BaaSを活用することで、非金融業でも銀行ライセンスを取得することなく金融サービスを提供できるのがメリットです。従来でも、さまざまな企業が銀分野への参入を試みていましたが、多額のコストがかかるのも大きな障壁になっていました。

そこで自社で銀行などの金融基盤を構築するよりも、BaaSを活用する方が低コストで実現しやすいです。また、非金融企業は今までよりも利便性・付加価値が高いサービスを提供できるようになるため、顧客満足度の向上などにもつながるでしょう。

例えば、ZOZOTOWNのツケ払いのような後払い決済サービスを導入できれば、商品をカートに入れてから決済手続きを完了させるまでのプロセスがスムーズになります。その結果として、カゴ落ちリスクの低下や顧客層の拡大などにつながるでしょう。

銀行側のメリット

銀行などの金融業の場合、BaaSの基盤を提供しているため企業と提携し、間接的な顧客獲得につながります。入口はECサイトなどの企業ですが、利用している決済サービスなどの基盤は金融機関のものであるため、銀行利用者が増えることになるでしょう。

例えば、決済サービスだけでなく資産管理や個人間送金を行えるサービスの基盤を提供することで、多くの顧客を獲得できる可能性が生まれます。また、企業と提携することで、今まで実現できなかった新しいサービスの創出につながり、他の金融機関と差別化を図りやすくなるでしょう。

ユーザー側のメリット

ユーザーは普段から利用しているサービスの中で、金融機能を利用できるのがメリットです。BaaSのサービスを使えば、銀行などのサイトに遷移する必要がなかったり、銀行の窓口で手続きをしたりする必要がなくなります。後払い決済サービスであれば、手元にお金がない状態でもショッピングを楽しめるため、ユーザーにとっての利便性は高くなるでしょう。

BaaS活用の事例

ここからは、BaaSを活用している企業の事例を紹介します。

ヤマダホールディングスの事例

ヤマダホールディングス

ヤマダホールディングスは、住信SBIネット銀行のBaaSを活用して金融サービスを提供しています。具体的にはヤマダホールディングス内の子会社が銀行代理業として、預金・融資などを行います。主な役割は提携しているハウスメーカーで、顧客が住宅を購入したりリフォームしたりするときに、住宅ローンなどの金融サービスを提供することです。

ヤマダホールディングス内には家具や家電を販売している企業もあるため、金融サービスを提供した顧客にグループ内で利用できる優待などを送ることで、より一層消費を促せるでしょう。また、金融サービスを提供することで家具や家電を購入する際に、予算不足による機会損失も防げます。

このように、金融サービスを提供することでグループ内の売り上げを伸ばすことにつながるでしょう。

ドコモの事例

NTTドコモは2021年5月11日、三菱UFJ銀行と提携し、BaaSサービスであるデジタル口座を提供すると発表しています。今まで、ドコモはクレジットカードである「dカード」や、決済サービスである「d払い」を手掛けていますが、自社で銀行口座は持っていませんでした。

そこでBaaSのデジタル口座を提供することで、共通ポイントである「dポイント」がたまりやすくなり、ポイントを投資・保険などに使えるなどサービスの幅が広がります。

NTTドコモ三菱UFJ銀行

BaaSの今後の動向

BaaSサービスは利便性が高くそれぞれの分野においてメリットが多いですが、いくつか課題もあります。まず、現状では銀行ごとにBaaSを個別に開発しているため、それぞれの仕様が異なります。その結果、開発が複雑になることで普及の妨げになっているため、より利便性を高めるためには、それぞれのAPIの仕様を統一する必要性があるでしょう。

このBaaSに関する動きに関しては、国内よりも海外の方が進んでいます。海外では、さまざまなサービスを提供しているスーパーアプリに銀行機能を組み込む動きがあります。国内では2020年の法改正により金融サービス仲介業が可能になったことで、さまざまな金融機能を1つのサービスで提供できるようになりました。

このような動きから、金融サービスを1つのサービス・アプリで提供できるようになれば、さらにBaaSは普及していくでしょう。

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記助
IT業界に限らず、さまざまな分野に携わるマルチライター。
メタバースやAIなど、ホットな話題を提供します。
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