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人流データがビジネスの次の成功を支える、国交省も取り組む巨大なポテンシャル市場

2022年11月08日更新

人の動きに関する情報である「人流データ」。カメラやセンサーの性能が向上したことや、スマートフォンの基地局情報やGPS情報などから人流データが取得しやすい環境になっています。実際に人流データを活用しようとする取り組みが広がっており、民間企業だけでなく国土交通省も事業として取り組んでいます。

そこで今回は、人流データに関する技術や取り組みについて解説します。

人流データとは

人流データとは、人の流れに関するデータであり、「人がいつ・どこに・どれくらいいるのか」を把握できるデータとのことです。

近年では、センサーやAI技術の向上、IoTの普及、スマートフォンなどの基地局情報、GPS情報などにより、精度が高い人流データを取得しやすくなっています。

これにより建物内の状況や、人の動き・バイタル情報などを活用できるデータとして扱えるようになりました。人流データを計測・収集し、分析することで、情報の可視化やシミュレーションなどに使われます。データを活用することで、人流データから商圏を把握するなど、マーケティングなどにも活用できます。

特に最近では、新型コロナウイルスへの対応としてリモートワークが推奨されたことにより、この人流データを活用して「オフィス出社率」を計測する試みも登場しました。

さらに、土地・不動産やまちづくり、観光、交通、防災など、生活に密着した分野にも応用できるため、地域課題の解決への活用にも期待されています。さらに、現実空間のデータを仮想空間へリアルタイムに反映する「デジタルツイン」技術もあわせて注目されています。

これらの技術はさまざまな分野への活用が期待されています。

人流データの代表的な種類

地域課題解決のための 人流データ利活用の手引き

出典:国土交通省:地域課題解決のための 人流データ利活用の手引き Ver1.0

人流データの種類は多く、活用する組織によっても違いがあります。代表的な人流データには、カウントデータ、滞留データ、ODデータ、移動軌跡データなどがあります。

カウントデータ

ある地点を通過する人数・通行量などのデータ。その中で、時間・移動方向・属性などに合わせて取得・算出される場合がある。

滞留データ

ある地点や特定の空間内において、一定時間とどまっている人数を把握したデータ。そのエリアの密度や混雑具合などを把握するために利用される。カウントデータと同じく、時間などの複数の要素で絞り込み、取得・算出される場合がある。

ODデータ

特定エリアの出発地(Origin)から目的地(Destination)までを移動した人数を把握したデータ。2地点間の人の流れを把握できるため、どこから来ている人が多いか、どこに向かっている人が多いかを知るために利用されます。

移動軌跡データ

1人1人の移動軌跡を把握したデータ。店舗内での移動、歩道における通行人の軌跡、観光地における周遊ルートといった、軌跡・ルートを把握する場合に利用されます。

人流データの活用事例

人流データはさまざまな分野での活用が期待されています。各分野の活用事例を紹介します。

商業施設の事例

商業施設や駅構内、イベント会場などとして使われる大型の公園など、人が多く集まる施設では人の流れを分析し、シミュレーションなどに使われます。例えば、人流データから動線計測・シミュレーションを行うことで、最適なレイアウトの設計や改善につながります。

集客効果の把握が容易になるだけでなく、イベントの効果や購買行動などの分析も行えるでしょう。駅構内などであれば、動線・滞留状況を把握できるので、混雑緩和などの対策につなげられます。

人流データの商業施設での活用事例

資料:コニカミノルタ

バスの運行の改善や路線の開設

人流データは交通・運用関連と相性が良く、さまざまな分野でシミュレーション・分析を行い、最適化できるように活用されます。バスなどの交通機関の場合、ICカードのデータが主要な情報源であり、それ以外は経験などにより運行を決めていることが多いです。

そこで、人流データを活用することで、顧客の量に合わせて増便・減便し無駄がない運行を実現できます。さらに、人の流れから適切な新路線の開発も行えます。

AIを活用した人流マーケティング

人流データを活用したシミュレーションに、AIを使うことでより精度の高い分析を行えます。例えば、商業施設の売り場などでは、来場者がどのように回遊するのかを分析し、それに合わせて商品の陳列などの戦略を考えられます。

カメラにより顔・服装・持ち物などから人物の属性や、同一人物なのかも特定できるため、質の高い人流データを収集し、分析に利用できます。

人流データの注意点

人流データの取得方法によっては個人情報が含まれることがあり、取り扱いに注意しなければなりません。実際に、取得する情報量が多くなり、照合の技術が高まることで個人を特定・識別できる可能性が高まります。

このように、人流データを活用する際は個人のプライバシーを守る仕組みを構築しなければなりません。しかし、スマートフォンの利用者は、自分の知らないところでデータが収集されており、個人を特定される可能性があると知れば、大きな不安を抱えることになるでしょう。

他にも、人流データの利活用には大きな課題があります。人流データといっても、研究機関などの組織によりデータのフォーマットが異なります。そのため、企業間など組織をまたいだ活用が難しい状況であり、統一的なフォーマットの整備が必要です。これらの課題により、データの利活用は十分に進んでいません。

国土交通省の取り組み

国土交通省では、人流データを活用することで次の効果が期待できると考えています。

  • 効果的・効率的な地域課題の解決
  • 「新しい生活様式」を支える新たなサービスなどの創出

これらを実現するために、自治体と力を合わせて多様な人流データを活用できるように考えています。地域課題解決への適用方法を検討し、モデル的な活用事例の構築を支援するなど、人流データ活用の普及に向けた環境整備や、利用拡大に向けて支援しています。

現在でも、地方公共団体と民間事業者などが連携して、人流データの取得・分析・活用を通して地域の課題解決を目指しています。ここからは、国土交通省が採択した「地域課題解決モデル事業」をいくつか紹介しましょう。

福島県会津若松市

「地域課題解決モデル事業」福島県会津若松市

会津若松市は地域住民の公共交通の利便性や持続性を確保するために、人流データと人口データを組み合わせて可視化します。公共交通機関の再構築、新しいサービスの創造など、すでに並行して動いている交通計画・再編策定事業との連携により活用を図っています。

熊本県熊本市

「地域課題解決モデル事業」熊本県熊本市

熊本市では、中心市街地への誘客による消費拡大・経済活性化と、公共交通の利用促進による市内混雑緩和が大きな課題でした。実際に、中心市街地を訪れる人や公共交通の利用者も減少傾向にあります。そこで、人流・消費における施策の効果をデータ分析に活用することで改善を図っています。

神奈川県鎌倉市・藤沢市

2022年度の対象地域と2023年以降の目標

国土交通省 令和3年度人流データを活用した地域課題解決モデル事業

出典:国土交通省 令和3年度人流データを活用した地域課題解決モデル事業

神奈川県鎌倉市・藤沢市は、首都圏から多くの観光客が訪れるエリアであり、特定交通機関の人出が集中したり道路が混雑したりします。観光客の満足度が低下するだけでなく、周辺住民の生活にも影響が出ています。

このエリアの渋滞・混雑への課題意識は強く、混雑情報の取得など人流データを活用することで、課題解決に向けて検討が進められています。

今後分析とシミュレーションの精度向上へ

今回は、人流データに関する技術や活用事例を解説しました。現在では、センサーなどの技術や分析技術が向上したことにより、精度の高い人流データを収集できるようになりました。

これらの活用は、民間企業だけでなく、国土交通省など国策事業としても進んでおり、幅広い分野で期待されています。しかし、個人情報に関する問題や、組織ごとにフォーマットが統一されていないなど課題も多くあります。

今後は技術がさらに発展して分析やシミュレーションの精度が高まるだけでなく、課題を解決することで、人流データの活用が加速度的に普及していくでしょう。

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記助
IT業界に限らず、さまざまな分野に携わるマルチライター。
メタバースやAIなど、ホットな話題を提供します。
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