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百貨店各社がショールーム型店舗開設へ、EC、AIとの連動のゆくえ

2022年10月25日更新

最近注目されている新しい店舗の形態に「ショールーム型店舗」があります。大手百貨店などでスペースの開設が進んでおり、今後の新しい店舗体験として従来のビジネスモデルから脱却を考えています。そこで今回は、大手百貨店などで開設が進むショールーム型店舗について解説します。

近年では、大手百貨店などが「ショールーム型店舗」を出みせできるスペースを開設し始めています。ショールーム型店舗とは、店舗でモノを購入するのではなく「体験」「お試し」することを重視している店舗体系のことです。

そのため「触れるカタログ」「売らない店舗」などとも呼ばれています。このショールーム型店舗は、新しい店舗の形であり、百貨店の従来のビジネスモデルから脱却する手段として注目されています。

基本的にショールーム型店舗は「モノを購入できる場所」ではなく、「モノを試せる場所」として機能します。新商品やSNSなどで注目されている商品がディスプレイされており、顧客は手に取って触ったり使ってみたりすることができます。

店舗にはレジがなく、スタッフの説明・案内に専念できる仕組みです。興味を持って来店した人、店頭ディスプレイが気になって訪れた人などに、丁寧な接客ができるため、商品の興味・関心を高める効果は高いといえるでしょう。

ショールーム型店舗では売りモノの商品はありませんが、各商品の近くにQRコードが設置されており、そのコードを読み込むことでECサイトにアクセスして購入できる仕組みです。

このようにオフラインとオンラインが融合した店舗体験は「OMO(Online Merges with Offline)」と呼ばれており、注目を集めている1つの店舗体系です。具体的には以下のような例が出てきています。

注目を集めたショールーム型店舗の事例

新宿高島屋「Meetz STORE(ミーツストア)」

Meetz STORE(ミーツストア)は新宿高島屋のショールームスペースです。出展数が多く、さまざまなギフトシーンにおすすめのアイテムを試すことができます。ギフト商品はオンラインで購入した際にギフト包装まで対応しており、LINEやメールのアカウントを通じて、住所を知らない相手にも商品を送れる 「ソーシャルギフト」にも対応しています。

Meetz STORE

Meetz STORE(新宿店 2階)イメージ(画像:高島屋

大丸東京店「明日見世(あすみせ)」

明日見世(あすみせ)は、2021年10月にオープンした大丸東京店のショールームスペースです。商品担当のアンバサダーが常駐しており、丁寧な接客を行います。NTTドコモの協力もあり、人工知能が取得したカメラの映像から精度の高い来店分析などを実施しています。

asumise

大丸松坂屋百貨店の“売らない店”「明日見世(asumise)」(画像:大丸松坂屋百貨店)

百貨店にとっての恩恵とショールーム型店舗に求められること

百貨店側はショールーム型店舗のスペースを盛り上げることで、顧客支持の高いブランドを増やし、百貨店全体の魅力を高められます。そのスペース自体の価値が高まることで、集客力を高められるでしょう。

一方、ショールーム型店舗のような「売らない店舗」では、充実したECサイトの存在が必須です。せっかくショールームで良い体験をしても、ECサイトが使いにくいものであれば顧客は購入まで進めません。さらに、従来の店舗での買い物では「ついで買い」が多くありましたが、このショールーム型店舗ではその機会が失われてしまう可能性があります。

そのため、ECサイト上では利用しているユーザーに、おすすめの商品を表示するレコメンド機能なども求められます。この場合、AIなどを活用してより効果的な商品を表示する必要があります。百貨店に出展している場合は、ギフトが目的である顧客も多いため、ラッピングの対応など柔軟なサービスの展開も必要になるでしょう。

百貨店にとっての恩恵とショールーム型店舗に求められること

今後の展開を左右する店舗の最新技術

AIをはじめとしたITの発達により、店舗体験が多様化しています。例えば、店舗にレジが存在しない「レジレス型店舗」や「BOPIS(Buy Online Pick-up In Store)」などが代表的な事例です。レジレス型店舗はコンビニなどの実用事例があり、顧客は店舗の商品を手に取るだけで、退店と同時に自動決済が行われます。そのため、レジに並んだり代金を支払ったりする必要がありません。

BOPISとはECサイトで購入した商品を店舗で受け取れる仕組みのことです。ユーザー側は商品の送料負担がなく、自分の好きなタイミングで商品を受け取れるなどのメリットがあります。店舗側も商品の購入機会が増えたり、物流コストが削減できたりします。

このように店舗運営に関する新しい技術・形態が登場したことも、ショールーム型店舗が注目されている大きな要因になっているでしょう。

ショールーム型の最新技術

ショールーム型店舗に出展するメリット

ショールーム型店舗に企業が出展するメリットは多くあります。まずは出展側の企業にはどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。

店舗在庫の最適化

最大のメリットは店舗が在庫を抱えることなく出展できる点です。店舗に配置する商品は見本品だけで良いため、在庫を保管するスペースが不要になります。省スペースで出展できるため、実践するハードルが低くなるでしょう。

充実したマーケティングリサーチ

ショールーム型店舗では、顧客とのコミュニケーションにリソースを割くことができ、従来よりも時間をかけられます。来店した顧客からの生の声を収集することで、商品開発などに役立つでしょう。また、顧客の動向や反応などのデータを収集・分析することで、出展効果の検証も行えます。

データを集めて分析することで、次のアクションのための戦略を考えられます。

D2Cブランドが多く出展

百貨店の例が出ましたが、本質的には、このショールーム型店舗に出展することが多いのはD2C(Direct to Consumer)ブランドです。D2Cは、生産者が直接消費者と取引する形態のことであり、コストを下げられるため収益性は高いですが、顧客の開拓に時間がかかるという課題があります。

そこで、ショールーム型店舗であれば顧客との対面でのコミュニケーションを大切にでき、顧客の実物に触れたい・見たいというニーズを満たせます。さらに、店舗は在庫を抱える必要がないため、従来の百貨店への出展よりも参入ハードルが低いことも大きな魅力です。

近年増えているD2Cブランドはスタートアップが多いですが、百貨店に常設店を設けるだけの資本力がないケースは少なくありません。そこで、在庫なし・省人化などにより負担を軽減することで、出展が可能になっています。

このように新興D2Cブランドが多く出展することで、売り場スペースが盛り上がり、ショールーム型店舗自体の価値も高まるでしょう。

新しい店舗の形が注目される背景

ショールーム型店舗が注目されている要因はさまざまありますが、コロナ禍による影響を大きく受けています。新型コロナウイルスの蔓延以降は、消費者行動が大幅に変わりました。通販の需要が高まっただけでなく、さまざまな世代が利用するようになりWeb上での購入ハードルが下がっています。デジタル化の影響も受けて、コロナ禍以前もEC市場は拡大していました。

そこに、コロナ禍における外出自粛・巣ごもり需要などにより、EC市場はさらに拡大したと考えられています。

経済産業省「令和2年度産業経済研究委託事業 電子商取引に関する市場調査」

経済産業省「令和2年度産業経済研究委託事業 電子商取引に関する市場調査

主なターゲットはミレニアル世代・Z世代

ショールーム型店舗は、モノを売らない「体験型店舗」とも呼ばれており、主なターゲットは20代~30代のミレニアル世代・Z世代です。ミレニアル世代とは2000年以降に成人を迎えた世代のことであり、25歳から40歳前後までが該当します。

このミレニアル世代は、成長にあわせてインターネットが急速に発展・普及しており、時代の急激な変化を体感しています。消費行動としては、消費することよりも「体験」することを重視する傾向が強いです。

また、Z世代は「デジタルネイティブ世代」のことであり、生まれたときからインターネットが身近にある世代のことです。Z世代もミレニアム世代と同様に体験を重視しますが、同様にコストパフォーマンスも重要と考えています。

この2つの世代であれば、新しいショールーム型店舗でも順応しやすく、価値を感じてもらいやすいでしょう。

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記助
IT業界に限らず、さまざまな分野に携わるマルチライター。
メタバースやAIなど、ホットな話題を提供します。
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