デジタル庁がいきなり迎える正念場の年、行政や産業、社会を変えられるのか
2021年にデジタル庁が設立され社会のデジタル化実現に向けて大きく動き出しました。しかし、2022年は第一歩として、行政、産業、社会をリードできるのかが問われる年になります。
岸田首相を会長とするデジタル臨時行政調査会のあり方、自治体システム標準化、ガバメントクラウドなど論点は多いでしょう。実際に、デジタル庁の政策とその工程表を確認してみると、政策の数とスケジュールがタイトであることが分かります。
例えば、ワクチン接種証明などの緊急時を含めた行政サービスのデジタル化、GIGAスクールやオンライン診療など準公共分野のデジタル化、データ戦略、5Gを含む産業のデジタル化など実施予定の施策は多いでしょう。
そこで今回は、デジタル庁の現在の動きや課題点について詳しく解説します。
デジタル庁が目指す「デジタル社会」の実現
「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を」をスローガンに、デジタル社会を実現するために2021年9月に設置されました。そのため、2022年は各政策が本格的に動き出す最初の年になるでしょう。
国や自治体、民間事業者などの関係者が連携し、社会全体がデジタル化に向けて進んでいくため、どのようなアクションを起こしているのか把握するのがおすすめです。
デジタル化によって目指す社会
デジタル社会の目的は、社会全体のデジタル化により「国民生活の利便性の向上」「官民の業務効率化」を実現し、データを最大限活用することで「安全・安心を前提にした人に優しいデジタル化」を目標にしています。
社会のデジタル化が進むことで、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができたり、そのサービスを低コストで利用できたりするようになるでしょう。その結果、デジタル化により多様なユーザーが価値ある体験をより一層行えるようになります。
「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」
デジタル庁で掲げている「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」とは次のように記載されています。
画像は「デジタル社会の実現に向けた重点計画」から
“個々人の多種多様な環境やニーズを踏まえて、利用者目線できめ細かく対応し、誰もが、いつでも、どこでも、デジタル化の恩恵を享受できる社会を実現します。”
出典:デジタル社会の実現に向けた重点計画|デジタル庁
目指す社会を実現するための施策と政策
デジタル庁ではデジタル社会を実現するために、さまざまな切り口から整理して具体的な施策を展開・推進することが求められています。デジタル庁によるデジタル社会の実現に向けた重点計画の中で、施策を展開する「6つの分野」とその主な取り組みは以下の通りです。
1. 継続的な成長:デジタル化による成長戦略
- 行政手続のオンライン化
- データを誰でも扱いやすく
- 官民の相乗効果を発揮する
- 規制改革の実施
2. 一人ひとりの暮らし:医療・教育・防災・こども等の準公共分野のデジタル化
- 暮らしのサービスを柔軟に
- データの利活用を促進
- 連携の仕組みの標準化
- 制度の見直し
3. 地域の魅力向上:デジタル化による地域の活性化
- 業務を効率化する
- 情報インフラの整備
- 人材と課題をつなげる
4. UX・アクセシビリティ:誰一人取り残されないデジタル社会
- 利用者視点に立つ
- 高齢者や障害者の支援
- 情報リテラシーの啓発
- 根拠と効果の可視化
5. 人材育成:デジタル人材の育成・確保
- 情報教育の強化
- 人材育成環境の整備
- 行政機関での人材確保
6. 国際戦略:DFFTの推進を始めとする国際戦略
- 自由なデータ流通
- 国際的な情報発信
- 国際競争力の強化
それぞれの目標を達成するためには、国だけでなく地方公共団体・民間事業者が連携・協力しながらデジタル化を進めていく必要があります。
デジタル庁の政策の概要
デジタル庁では、各分野における取組を進めています。現在の取組状況は次の通りです。
1. デジタル社会に必要な共通機能の整備・普及
- マイナンバー(個人番号)制度
- GビズID
- 電子署名
- 電子委任状
- ガバメントクラウド
- ガバメントソリューションサービス(ガバメントネットワークの整備)
- 地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化
- サイバーセキュリティ
- データ戦略
- DFFT(Data Free Flow with Trust:信頼性のある自由なデータ流通)
2. 国民目線のUI・UXの改善と国民向けサービスの実現
- UI・UX/アクセシビリティ
- マイナポータル
- 公共フロントサービス(ワンストップサービス等)
- 政府ウェブサイトの標準化・統一化
- 準公共分野のデジタル化
- 相互連携分野のデジタル化
- 新型コロナワクチン接種証明書アプリ
- Visit Japan Webサービス
- その他国や地方公共団体の手続等のデジタル化
3. 国等の情報システムの統括・監理
- 国の情報システムの整備・管理の基本方針を策定
4. その他
- デジタル人材の育成・確保
- シェアリングエコノミーの推進
DXの推進における課題
経済産業省では、社会のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に向けた対策を実施していますが、2025年に迎える「2025年の崖」という問題が発生すると発表しています。この2025年の崖とは、既存システムの複雑化・ブラックボックス化することや、デジタル化に対応できないケースなどにより、2025年以降に年間12兆円もの経済損失が生まれるというものです。
2025年の崖(画像は経済産業省の資料「D X レポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」から)
このような損失を防ぐためにも、企業のDXを推進する必要があり、デジタル庁も関係しています。しかし、デジタル庁はデジタル臨調において「今の日本の変革スピードでは、デジタル化が進む中での構造変化に間に合わない」としています。
社会のデジタル化・企業のDX推進を実現するためにも、デジタル臨調では制度面での見直しを進めています。まずは、既存の法令・通知などが改革の共通指針である「デジタル原則」に沿っているか洗い出します。
また、新しく生まれる法律などのルールがデジタル原則に基づくものか、監視・監督する「デジタル法制局」の設置を検討しています。2022年は、このような法整備や運用などを実行することが大きな課題となっているでしょう。
政策実現の最大の懸念はリソース不足
デジタル社会の実現に向けた重点計画の工程表によると、多くの政策が2025年度までに対応することになっています。2021年9月時点で600人規模、民間人材は200人ほど起用していますが、デジタル庁が管轄・主導する政策のボリュームに対して、人材は圧倒的に不足しているでしょう。
実際に、自治体の担当者からはこの工程表の内容では、「2022年度にこのシステムの全体設計をする必要があり、このスケジュールでは難しい」という声が上がっています。もし全国の自治体が計画を進めるために標準準拠システムに移行しようとすれば、民間のITコンサルティング企業・ITベンダーのリソース不足も懸念されるでしょう。その結果、人件費の高騰などが予想されます。
2022年はデジタル庁にとって重要な年になりますが、人材不足を始めとする不安要素は大きいといえるでしょう。
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