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DX推進や内製化の切り札として期待されるローコード/ノーコード開発、その革新と限界

2022年04月15日更新

新たなアプリケーションの開発手法として、急速に注目を集めているのがノーコード/ローコード開発です。ソースコードを全く書かないか、あるいは極力書かずにアプリケーションを開発する手法です。

以前は日本で超高速開発と呼ばれていた経緯がありますが、これによりプログラムの知識を持たないもののビジネスに詳しい業務部門の人員が、アプリケーション開発に関われるようになります。

デジタルトランスフォーメーション(DX)を進める上で、社内の業務部門がアプリケーション開発に携われることによるビジネスメリットに期待が集まっていますが、限界も指摘されています。そこで今回は、ローコード/ノーコード開発の特徴や注目されている背景、その限界と言われているポイントを解説します。

ローコード/ノーコード開発とは

ローコード開発とは、従来のプログラミングと異なり少ないプログラミングコードでアプリケーションを開発するものです。基本的には、専用のツールを使うことでできる限りソースカードを書かずに開発できます。このツールのプラットフォーム上のGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)を用いて、画面上のパーツを視覚的に操作することでプログラミングを進めます。

ノーコード開発とは、ローコード開発よりもさらにプログラミングの工程を簡略したもので、ソースコードを書かずに開発します。こちらも専用ツールのプラットフォームを使い、完成されたパーツ・テンプレートを画面上で操作し、組み合わせることで開発できます。

例えば、自動車メーカーのSUBARUは、新型コロナウイルス感染症による影響によって、製造に関連する部品供給サプライヤーとのデータの受け渡しに課題が発生していました。そこで、ローコード/ノーコード開発によってサプライヤーとの情報共有を進めるウェブページを短期間で刷新しました。重要な製造関連の情報連携を、混乱から救うことができたわけです。

IT調査会社のITRが2022年2月に発表した国内のローコード/ノーコード開発市場規模推移および予測では、ローコード/ノーコード開発市場の2020年度の売上金額が515億8000万円と対前年度比24.3%増と堅調に伸びていることが分かりました。

経済産業省が発表したDXレポートで、既存システムが残存した場合に想定される国際競争への遅れや経済の停滞をリスクと指摘する後述の「2025年の崖」への危機感を背景に、企業においてDX推進が急務となっていると説明しています。

ローコード/ノーコード開発市場規模および予測

ローコード/ノーコード開発のメリット

ローコード/ノーコード開発は、いずれも開発の負荷を軽減できるため注目されています。ここからは、注目されている理由について詳しく紹介します。

以前より短期間で開発できる

従来のプログラミング開発よりも短時間で開発できるのがメリットです。ローコード開発では、仕様変更を伴わない既存の機能を中心に、テンプレートを使ってアプリケーションを構築できます。

これにより、開発工数や開発期間を大幅に短縮し、開発費用の削減にもつながります。ビジネスへのすばやい適用が鍵を握るDXでは、開発期間の短縮は大きなポイントになります。

非エンジニアでも開発しやすい

従来は、プログラミングの知識・スキルを持つエンジニアでなければ、アプリケーションの開発はできませんでした。そのため、開発したいアプリケーションのアイデアがあっても、エンジニアがいなければそれを実装するのが難しいのが課題でした。また、必要な知識やスキルを習得するのにも時間がかかるため、貴重なIT人材を確保する労力もかかるでしょう。

ローコード開発であれば、技術面でのハードルを大幅に下げることができ、非エンジニアでも開発に参加しやすいです。

汎用性・拡張性が高い

ローコード開発はシステム開発をしやすくするだけでなく、少ないコードの記述で構築します。コードの記述も自由に行えるため、構築完了後に必要な機能を追加するなど、拡張性に優れています。

また、多くのローコード開発ツールにはシステムと連携するための機能があります。この機能を活用することで、今使っているシステムやこれから開発するシステムと連携しやすくなり、業務効率化を図りやすくなります。

ローコード/ノーコード開発の課題と限界

ローコード/ノーコード開発にはメリットだけでなく、機能の限界や課題もあるため導入する際は注意が必要です。ここからは、どのようなことに注意すべきか紹介します。

ローコード/ノーコードで開発できる内容は、使用するツールのプラットフォームに依存します。特に、ノーコードの場合は、プラットフォームに対応していない機能を搭載することはできません。ローコードの場合はコードを記述すれば自由に機能を追加できますが、結局エンジニアの技能が必要になるでしょう。

そのため、プラットフォームの限界を超えるような、高度で複雑な機能にはローコード開発ツールに向きません。また、自分でコードを入力する場合、内容が複雑になるとかえって時間がかかり過ぎることがあるため、大規模なシステムの開発には対応できない場合もあります。

システムの詳細がブラックボックス化しやすい

ローコード/ノーコード開発は直感的に操作できることがメリットですが、同時にデメリットにもなりかねません。従来の開発方法と比較すると直感的な操作が増える分、使用・設計のドキュメントが残っていないケースが多くなるでしょう。そのため、将来的にシステムがブラックボックス化する危険性があります。

シャドーITが増える可能性がある

ローコード/ノーコード開発はツールを導入するなど、開発環境を揃えることで開発のハードルを下げることができます。しかし、誰でも簡単にシステムやアプリケーションを開発できるのであれば、シャドーITが蔓延する可能性があります。

シャドーITとは、情報システム部門などが関知しておらず、企業で把握していない情報システム利用のことです。正しい知識を持たない従業員が、自由に個々が求めるアプリケーションを開発することで、統制が取れなくなる可能性があるでしょう。

このようなシャドーITが増えることで、情報漏えい・システム障害・内部不正などの問題が増えるリスクがあります。

ローコード/ノーコード開発

ローコード開発の現状

2022年現在では、日本企業の半数がローコード開発を活用していると言われています。IT人材不足が深刻化していることもあり、システム開発の効率化・開発期間の短縮のために、導入が進んでいると考えられています。

また、米ガートナーは、2024年までに世界のアプリケーションの65%以上がローコード開発基盤で構築されると予測しています。ノーコード開発の場合は、システム開発により搭載できる機能はプラットフォームに依存します。しかし、ローコード開発であれば必要な箇所のみにコーディングを集中できるため、以前よりも開発効率は高くなるでしょう。

DX推進と「2025年の崖問題」

2025年の崖では、システムのブラックボックス化・複雑化、現場でのデジタル活用が進まないことなどにより、データ活用ができない場合、2025年以降に最大年間12兆円の経済損失が生まれる可能性があるとしています。

この2025年の崖を克服するためには、各企業のデジタル化を推進する必要があります。今後、新型コロナウイルス感染症が終息すれば、DXの推進に向けてより動きが活発になるでしょう。企業が開発スピードを高めようとしているため、ローコード開発の導入ペースは加速していくと見込まれています。

一般企業だけでなく官公庁や金融機関などからも注目され、活用が進んでいる技術です。特に規模が大きなレガシーシステムを抱える企業では、今後の問題を解消するために、DXを進める動きが活発になっています。

国もノーコード・ローコード開発を重視(経済産業省「取得財産に係る法人等との手続きの電子化に向けたシステム構築の調査・検討」

キャプション:国もノーコード・ローコード開発を重視(経済産業省「取得財産に係る法人等との手続きの電子化に向けたシステム構築の調査・検討」から)

その際に、既存のレガシーシステムではなく新しいプラットフォームに移行することが求められ、その新しい環境を構築するためにローコード開発は用いられているのです。

このように、ノーコード・ローコード開発を活用することで企業はDXを進めやすくなりますが、限界もあります。導入を検討している企業は、最初にメリットとデメリットを押さえておく必要があります。

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記助
IT業界に限らず、さまざまな分野に携わるマルチライター。
メタバースやAIなど、ホットな話題を提供します。
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