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クッキー後の世界はいかに、早くも始まる覇権争い

2022年03月31日更新

2021年12月1日、総務省がターゲティング広告など利用者のデータ提供に関するルール整備に乗り出す、とのニュースが流れました。現在のWeb環境では、利用者がサイトを閲覧すると、訪れたウェブサイトが発行したファーストパーティクッキーだけではなく、訪れたウェブサイト内でそのウェブサイト以外の場所から発行されているサードパーティクッキーが利用されます。

この仕組みにより、利用者が求めていると推測される分野の広告が、(裏側でウェブ広告の仕組みでひも付けられている)別なサイトを閲覧した際にも、自動的に表示される仕組みになっています。すなわち、閲覧履歴が第三者に流れているのです。

欧米では、サイトの閲覧履歴の勝手な流通はプライバシーの侵害に当たるとの認識が常識化し、GDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)をはじめとした法制化も進んでいます。日本もその流れに沿う方向にあり、閲覧履歴の提供は個人の了解を得ないとできない仕組みになろうとしています。これにより、閲覧データを分析する事業者や広告配信事業者は、これまでのビジネスモデルを変換する必要性に迫られることになります。

現在、早くもこの動きに対応し、次の手を打つべく、さまざまな会社が新しい手法の開発に乗り出して、新たなビジネスモデルの覇権争いが始まりました。この記事では、サードパーティクッキー規制後の世界を狙ったいろいろな動きを紹介します。

クッキーが果たしてきた功績

これまで、サードパーティクッキーなしには現状のビジネスモデルは成り立ちませんでした。これからのことを考える前に、今一度クッキーが果たしていた役割はどんなものであったのか振り返ってみましょう。

クッキーのはたらき

アマゾンなどのECサイトを閲覧したとき、IDやパスワードをその都度入力することなくログインができることを体験されていると思います。前回買い物かごに商品を入れたままの場合、入れたままの商品が残っています。

一度サイトを訪れると、そのユーザーに関して訪問日時・メールアドレスなど、サービスに必要な情報(データ片:クッキー)がサイトから渡され、これがユーザーの端末内に保存されます。

次回、そのユーザーが同じサイトを訪れたとき、前回訪問した時に保存されたデータ片はサイト側に読まれます。サイト側ではデータ片を利用し、そのユーザー専用のページを作って表示させることができるわけです。

これがクッキーの役割です。本来ユーザーの利便性を高めるためのものなのです。

ファーストパーティクッキー

サイトを訪れて、そのサイトから発行されたクッキーが端末内に保存される、というのがもともとのクッキーの在り方です。こうした通常のクッキーは、ユーザーが自分の意志で訪れたサイトが発行したもので、「ファーストパーティクッキー」といいます。

サードパーティクッキー

一方で、訪れたサイトに表示された第三者の広告から発行されたクッキーのことを、ファーストパーティと区別して「サードパーティクッキー」と呼びます。サイトに表示された広告は、あくまでも別なドメインのサイトです。一度ブラウザに表示されれば、そのドメインを訪問したことになりますので、ブラウザはそれぞれのドメインからクッキーを発行され、ユーザーの端末内に保存されます。

このようにサードパーティクッキーは、意図的に訪れたサイト以外からのクッキー発行ということになります。

各種の分析に使われてきたサードパーティクッキー

このようにして、各ユーザーの端末内に保存されたサードパーティクッキーは、マーケティングの領域で広く活用されています。それは、以下のような用途です。

CV率の測定

配信した広告に効果があったかどうかというCV(コンバージョン)率の測定

アフィリエイト

ブログなど広告収益を得るための計測手段

リターゲティング広告

別なサイトにも興味の推測に基づいた広告を表示させるため。

アトリビューション分析

どの広告がどのような貢献をしているかについて知るための分析

これらの機能の実現や測定、分析は、現状サードパーティクッキーなしには成り立たないといえます。

クッキーの問題点と規制の網

このようにWebマーケティングの世界においてクッキーは必要不可欠なものです。にもかかわらず、なぜ問題になっているのか、どのような点が規制の対象になるのかについて見ていきます。

クッキーによるプライバシーの侵害

日本では、改正個人情報保護法が公布され、2022年4月1日から施行されます。この改正法の内容で、データの利活用に関する施策の在り方として、第三者にデータを提供する際に本人の同意を必要とすることが盛り込まれました。

サードパーティクッキー自体はデータ片であり、それのみでは個人の特定に至らないものです。しかし、これが提供された先で分析されると、名前こそわからないものの、住んでいる地域や年齢、興味のあるものなどが分析され、その動きが追跡されます。

こうしたことが本人の許可なく行われると、プライバシーの侵害になるとの見方が、国際的にも常識になり、法改正にまで至ったというわけです。

欧米での対応

インターネットの世界には国境がありません。そこで、IT業界が注目するのは米国や欧州圏のプライバシー保護関係の規則です。

特に取りざたされているのが、前述したEUのGDPRと米カリフォルニア州の「CCPA (California Consumer Privacy Act):カリフォルニア州消費者プライバシー法」の2つです。

GDPRでは、氏名・住所・メールアドレスだけではなく、IDやIPアドレスも「個人データ」であるとされています。CCPAでの個人データの概念はもっと広く、GDPRで定義されているものに加えて、位置情報、インターネットの閲覧履歴、検索履歴、ショッピング履歴なども個人データであるとされています。つまり「クッキー=個人データ」という見方ができるのです。

こうした個人データの利用には本人の同意が必要であるとされています。このような法規制に対して、大手ベンダーはどのような対策をとっているのでしょうか。

大手ベンダーの対応

この動きへの対応に早くから取り組んでいるのがAppleです。同社のブラウザである「Safari」は、2017年から「ITP(Intelligent Tracking Prevention)」と称する機能を搭載し、トラッキングを防止してきました。

ITP2.3では、サードパーティクッキーの利用が完全にできなくなっています。またITP2.0以降よりファーストパーティクッキーにも段階的に制限をかけて強化されてきています。Appleは他社に先駆けて、プライバシー保護に慎重な姿勢をとっていることがうかがえます。

一方、Googleは同社のブラウザである「Google Chrome」で、2023年中にサードパーティクッキーを廃止することを発表しました。ライバルのAppleが完全にサードパーティクッキーを廃止した以上、真逆の動きはできないとの判断だったと考えられています。Apple とは違い、Google はWeb広告での収益を事業の柱にしているため、相当な工夫や代替策の開発費用が必要になることが見込まれます。

変わる広告の効果測定手法

サードパーティクッキーが使えなくなった世界で、どのように広告効果を測定していくのでしょうか。既に、関連する業界ではいろいろな取り組みが進んでいます。現在知られている取り組みをいくつかご紹介します。

共通IDソリューションを提唱

サードパーティクッキー廃止後の世界のために、IT業界は次の手を打つべく模索を続けてきました。

サードパーティクッキーの利用を廃止し、検索連動型広告にシフトするつもりでいたり、媒体に記載されたコンテンツをもとに広告商品を作るコンテキスト広告を作ったりする動きも見られます。

その中でも、「共通ID」という新たな仕組みを作り、業界全体でエコシステムとして運用しようという動きが活発になっています。これは、サードパーティクッキーを使わず、ファーストパーティクッキーのみを使用するソリューションです。

ユーザーがサイトを訪れた際に表示された広告と連携した「IDプロバイダ」で共通IDをつくり、データ利用の同意を得たうえで、ファーストパーティクッキーに保管。その後ほかの事業者もそのユーザーIDのファーストパーティクッキーを利用していくというものです。

この共通IDソリューションにも各社が提唱しているいくつかの種類があり、それぞれの利点をアピールしているところです。

Googleは共通IDを不支持。Privesy Sandboxを提唱

Googleは2023年までにサードパーティクッキーを廃止すると発表したのは先ほど述べた通りです。そのGoogleはどうするのかというと、独自の動きを見せて、関係者をざわつかせています。

2021年3月のGoogleの発表では、「サードパーティクッキーを廃止した後、自社の広告製品内でユーザーをウェブ上で追跡するためにメールアドレスなどの識別子を使用することはない」と記していたのです。つまりこれは、業界の標準になるであろうといわれていた「共通ID」方式は使わないことを宣言したのと同じことになります。

では、Googleはどうする考えなのでしょうか。その答えが、「Privacy Sandbox(プライバシーサンドボックス)」と呼ぶ、サードパーティクッキーを使わずに、最適な広告を表示させようという取り組みです。

これは、サードパーティクッキーを取得できなくなった代わりにGoogleがユーザーの情報を保持し、広告主はプライバシーサンドボックスを使ってそれを利用するというものになりそうです。

いまだ手探り段階ということですが、2023年までにサードパーティクッキーを廃止すると宣言しているのですから、それまでには完成するとみられます。また、このことでGoogleが市場を独占してしまうような事態になるのではとの疑念を持つ向きも多く、英国の競争規制当局である競争・市場庁から厳しい目を向けられているようです。

Googleとプライバシーサンドボックスの動きには注目していく必要がありそうです。

廃止後の変化に注目

知らない間に自分の閲覧内容が分析されているというようなユーザー体験は、不自然であることは確かであるため、サードパーティクッキーの廃止は必然的な流れといってもいいかもしれません。

逆に、共通IDやプライバシーサンドボックスが、サードパーティクッキーの欠点を回避し、「自分のことをわかってくれている秘書」のような存在として、利便性の高さを享受できるものであれば、価値があるでしょう。

サードパーティクッキー廃止後に新たな変化を見せる中で、Webマーケティング業界がユーザーにとってベストな進化を続けることが求められます。

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鬼尾宗慶
ITをはじめとする、各種ビジネス分野のライター。
SEやビジネスマンとしての30年にわたる経験に最新の知見を組み合わせて、各種Webメディアで執筆活動をしている。
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