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Web3.0とは何か? 過渡期における現在地

2022年04月14日更新

「Web3.0」という言葉が取り上げられる機会が増えてきました。GAFAの肥大化に象徴される、中央集権型のインターネット社会への批判が聞こえ、私たちの立ち位置も変化していくような動きが見え始めています。データを活用したビジネスを考えるうえで、Web3.0への流れはどのように影響してくるのでしょうか。

この記事では、そもそもWeb3.0とはいったい何なのか、どのようなメリットがあるのか、今後どのように変化していくのか、実在企業の事例等を踏まえながら紹介していきます。

Webの歴史を振り返る

Web3.0は「3番目のWeb」という意味ですが、1番目と2番目はどのようなものだったのか、まずは振り返ってみましょう。

Web1.0

インターネット回線が普及し始めてまもなく、それまでの電子メールだけの利用からの進化が始まります。インターネット回線にWebサーバーを立てて接続すれば、だれでもWebページを世界に向けて公開できるようになったのです。

パソコン雑誌の付録のCD-ROMにブラウザが入るようになり、誰もが世界とつながってWebページを閲覧できるようになりました。

これは世界に大きな衝撃を与え、あっという間にWWW(World Wide Web )が普及し、通信業者は、インターネット接続プロバイダ事業を開始します。それまで学術研究用のネットワークだったインターネットが一般個人のためのものとなったのです。

しかしこの当時は、一方的な情報公開で、相互のやり取りは電子メールで行うようなレベル。ハードウエアの性能は低く、通信インフラの速度も遅いため、音楽や動画などは大変扱いづらいものでした。

Web2.0

Web1.0の時代の後半に、プログラムで動的にページを生成することが始まり、閲覧者がメッセージを書き込める「掲示板」が流行します。これで、ページの所有者と閲覧者のコミュニケーションが可能になりました。やがてその動きはmixi(ミクシィ)やFacebook、Twitter などの登場を促し、あっという間にSNS、ソーシャルメディアネットワークを生成するに至りました。

情報を検索して閲覧することのほかに、インターネットのもう1つの主要な利用法が「双方向コミュニケーション」になったのです。加えてハードウエアの性能が向上、回線の速度も飛躍的に向上していき、写真や動画や音楽がどんどん流れるようになり、コミュニケーションはますます活発になっていきます。また、インターネットで商品を販売するショッピングモールもたちまち大きく広がっていきました。

ただ、1つ問題がありました。これらのサービスは、運用する主体が全権限を握っており、すべてのユーザーの動きをデータとしてためこみ、独占することができるようになっていたことでした。

個人に関する情報を一元的に管理するビジネスモデルは、サービス運営者への富の一極集中をもたらしました。次第にこのことが問題視されるようになり、その声は日増しに大きくなっています。

欧米では個人情報保護に関する法律に、インターネットのクッキーに関する規定が盛り込まれます。呼応してGAFA自体もサードパーティークッキーの廃止など個人情報の保護に取り組む姿勢を見せ始めました。

しかし、彼らはサードパーティークッキーに変わる方法でビジネスを継続しようともくろんでいますし、個人情報と富の一極集中問題がこれだけで解決するとは思えません。Web2.0は以上のような問題を持っていましたが、Web3.0はこの問題を根本的に解決することが期待されています。

Web3.0とは何か

では、Web3.0とはどのようなものなのでしょうか。実はまだ定義が定まっていません。一般に言われているのは次のようなことです。

権力の分散化

サーバークライアント型で個人IDを管理し、ログインした後に利用させる形態が一般化しています。個人のネット上の動きを追跡できるネットワーク構造に対しては、多くの人が疑問視するようになりました。Web3.0は企業のサーバーに一極集中するのではなく、お互い対等なノードがつながっていく分散型になるとされており、「権力が分散化する」といわれています。

では、なぜそのように言われるのでしょうか。

カギを握るブロックチェーン技術

仮想通貨などに使われるブロックチェーン技術こそ、Web3.0のカギを握るものだとされています。サーバークライアント型のネットワーク構造だとサーバーにすべてのクライアントがつながっている構造です。ブロックチェーンのネットワークは「P2P」型(Peer to Peer)といい、すべてのノードが相互に接続している構造です。いわばお互いがサーバーでお互いがクライアントだともいえます。

この、「お互いさまの関係」の中で、ブロックチェーンは取引の情報がブロックとなりチェーンでつながったような構造で分散して保存されます。各ブロックにはハッシュ値というものが記録されており、これを比較することで、改ざんや複製を直ちに検出する仕組みです。

つまり誰かが一元的に管理する構造を持っていない代わりに、ユーザー同士がチェックしあうシステムなのです。このほうが、サーバークライアント型より安全だ、とも考えられます。

Web3.0では、この技術を利活用して個人情報を巨大企業に独占されるような現況を変えていくことができるのではないかと期待されています。

WEB3

Web3.0が注目される理由とは

Web3.0が注目を集めている理由は以下のようなメリットがあるからだと考えられます。国境の制限の撤廃、個人情報の自己管理が可能、仲介業者を介さない直接取引が可能、セキュリティレベルの向上などです。1つずつ見ていきましょう。

国境の制限の撤廃

国によってはインターネットの閲覧に制限をかけていることがあります。中国などがそうで、国家が巨大なファイアウォールを設置し、GoogleやTwitterなど自由に情報を検索することは禁止されている状態です。P2Pネットワークで機能するWeb3.0の世界は、単一のサーバーに支配されない構造を持っていますので、だれでもどこにでもアクセスが可能となります。

個人情報の自己管理が可能

Web2.0と言われる世界では、個人IDとクッキーによって氏名がわからないままに個人が特定されている状況が生じていました。ちょっとのぞいただけなのに、そのサイトの広告がSNSやニュースサイトのバナー広告として出てくるといった経験をした人は多いでしょう。便利さを感じる人もいるかもしれませんが、欧米などでは、このようなクッキーは法的に個人情報に位置付けられ、規制の対象となっています。

Googleなどが良い例で、非常に便利な各種サービスを無料で使えるようにする一方で、検索履歴やアクセス履歴はしっかりと記録しているわけです。そしてその情報は、Googleという企業が収益を上げるために使われます。

Web3.0では各ノードにあるブロックの所持者がデータを管理しますので、個人情報は企業のものではなく自分のものです。よって、意図しない広告を見せられる必要はなく、“広告の視聴によって対価を得る”、という形が生まれる可能性もあります。

・仲介業者を介さない直接取引が可能

サーバーを必要としないWeb3.0では、P2Pの名の通り直接相手と取引することができます。一番わかりやすいのが銀行の例です。

銀行は消費者に預金口座を作ってもらい、これを管理し、手数料を得ています。ブロックチェーンでは取引の記録の正しさをユーザーが承認し、ブロックに記録されれば、それは改ざんされません。そのため管理者が不要になります。結果として、銀行は1つのアプリケーションに過ぎない存在になる可能性があります。

同様に、何らかのWeb上のサービスを仲介することによって収益を得ていたビジネスモデルは、発想の転換を余儀なくされるかもしれません。

・セキュリティレベルが向上

個人情報を含む取引情報がブロックチェーンで暗号化されているWeb3.0の世界では、リスクも分散されます。サーバークライアント型のWeb2.0の世界では、大元のサーバーが攻撃されれば個人情報が一挙に盗み出される懸念がありました。

Web3.0では、一挙に大量のデータが漏えいするようなリスクは考えにくいとされています。

現に稼働しているWeb3.0の事例

現在すでにWeb3.0だといわれるサービスの事例が出始めています。ここでは、Steemit、Brave、Azukiの3つを紹介します。

1. Steemit

Steemitは、Steem社が運営するブログサービスのような記事投稿サイトです。「いいね」やコメントをつけるなど投稿に対してアクションできるようになっており、一種のソーシャルメディアとも言えます。

従来のサービスと違う点は、投稿されたデータがブロックチェーン上にあることです。記事を投稿したり、評価したりすると報酬としてトークンがもらえます。

ただ、単純に投稿と評価をすればいいというものではなく、良い記事を投稿し、良い記事を評価することによってのみ報酬が得られるように、少し複雑な仕組みが設けられています。

もらったトークンは取引所でBTCやETHなどの仮想通貨と交換することができます。Steemitのホーム画面には「Coin Marketplace」のコーナーがあって、主要な仮想通貨の現在価値が分かるようになっており、過去の推移は折れ線グラフになって表示されています。

従来のブログは、読者を集めPV数を稼ぎ、表示された広告に対するクリック数に応じて広告収入を得るというものでした。Steemitでは投稿した記事の内容が直接評価されることとなり、もはや広告は関係ありません。

2. Brave

Braveとは日本語で「勇敢」という意味をもつ名のブラウザです。Braveは、デフォルトでサードパーティークッキーをブロックするように設定されています。それだけではなく、広告自体が全く表示されない設定となっています。その分、データ量は少なくなり、表示が早く快適なブラウジングが可能となっています。Braveでは、ユーザーの意向次第で設定が変えられ、広告表示を許可することもできます。ユーザーが広告を視聴すれば、その広告の数に応じて仮想通貨のBATが支払われます。

広告視聴の可否を選択でき、視聴すれば報酬が得られるブラウザということで、利用者数は増え続け、2022年1月5日に月間アクティブユーザー数が5000万人を突破したとの発表がありました。これは前年同月末の2倍以上の数字だそうです。

Microsoft EdgeやGoogle Chrome、Operaなどの寡占状態にあるブラウザ界に“勇敢”にも立ち向かうのでしょうか。

3. Azuki

2022年1月12日、ロサンゼルス在住の30代の男性5人組が、Azukiと呼ばれるアニメ調のキャラクターの8700点のNFTを売り出したとのニュースが流れました。NFTとは「Non-Fungible Token」の略で、「非代替性トークン」と呼ばれます。仮想通貨のようにブロックチェーン上に存在するのですが、特定の1つであることを示す識別子を持っています。

つまり不動産や美術品のようなものと同じく、複製できない唯一無二のものとして取引対象となるのです。

Azukiは1点あたり3400ドルで販売され、わずか3分で完売。2900万ドル以上の収益をたたき出しました。AzukiのキャラクターアートのNFTは転売も行われ、最も高価なものは50万ドルで取引されているそうです。

Azukiの人気は目下急上昇しており、これからインターネットでのコミュニケーションの主流になるといわれているメタバースでのアバターとして、今後も価値が高まることが予想されます。

Web3.0でデータはどのように活用されるのか

データを活用したビジネスを考える場合、Web3.0の世界ではどのようなことになると考えればよいのでしょうか。ビジネス界での活用方法について考えてみます。

食品流通のトレーサビリティーに活用

ブロックチェーン技術を使って、あらゆる農産物の真正性を証明できるトレーサビリティーシステムを構築することができます。これまで牛肉にかんしては伝染病予防の目的で法律に基づくトレーサビリティーシステムがありましたが、これはクライアントサーバー型で、法の強制力の元、牛一頭一頭が登録されデータベースが運用されており、結構大変なものでした。

ブロックチェーンを使ったシステムだと、養殖魚のようなものから野菜に至るまで、QRコードを使って消費者がスマホでその真正性をチェックできるようなシステムを構築することが可能となります。しかも改ざんが不可能なのでデータの信頼性が担保されています。

これによって、信頼性が保証された農畜産物は海外市場であっても高く評価され、高値で取引されるということが起こり得ます。「産地偽装」問題が話題になっていますが、このシステムに乗ればそのような問題は起こらなくなるでしょう。

革新的なソリューションが次々と登場

Web3.0は、ブロックチェーン技術によってデータの真正性を保証しながら分散して管理できる世界であることを述べてきました。企業が集めてきたデータは、AIでも活用されるようになり、革新的なソリューションが次々と登場しつつあります。

Web3.0の世界では、データ活用の世界にAIとブロックチェーンを組み合わせた新しい活用方法が出てくるでしょう。例えば、ブロックチェーンのブロックの中に入るデータが肥大化することによっておこる危険をAIで回避するとか、AIが扱うデータの真正性(偏っていないかなど)をブロックチェーンが保証するなどの活用法です。今Web3.0の世界から目が離せません。

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鬼尾宗慶
ITをはじめとする、各種ビジネス分野のライター。
SEやビジネスマンとしての30年にわたる経験に最新の知見を組み合わせて、各種Webメディアで執筆活動をしている。
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